SOLITUDE featuring Masayo Koketsu (Sony Music) |
| - 鈴木勲 |
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鈴木勲 (b,syn) 纐纈雅代 (as) 中村恵介 (tp) 板垣光弘 (ds) 川口弥夏 (ds) 2008/5月 |
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面白いベースの音色だ。 輪郭の硬いアタック感。 対照的に、減衰する際の柔らかなニュアンス。 この独特なベース音は、最近のロン・カーター的でもあり、リチャード・デイヴィス的でもある。 しかし、弦から発せられる倍音のギラリとした成分と、ブリッとした不適な音圧は、まぎれもなく鈴木勲のベース独自のもの。 それもそのはず。 鈴木自身の筆によるライナーを引用してみよう。 「今回使用しているベースは、16〜18世紀にヨーロッパで用いられたヴィオラ・ダ・ガンバをモデルにして、今から35年前に私が設計をして職人に創らせたもので、世界に一つしかない楽器です」 このオリジナル・ベースに、エレキベースの弦を張っているところがミソ。 普段は、チェロの弦を張ってリード楽器のように演奏することもあるそうだが、今回はエレキベースの弦を張ることによって、伴奏からメロディまでを自在にこなしている。 新品の弦を張ったエレキベース独特の弾力の強い強いバネがビヨーンとはじけるような音色から、ウッドベースの胴に開いた2つの穴(fホール)から発せられる下へ下へと沈む空気感のニュアンスまで幅広いレンジをカバーしていたのは、そのためだったのだ。 よって、全体を通してウッドベースばりの重低音がアンサンブルを地面の底からズッシリと支えるということはないが、かわりに“蠢く低高域”を存分に味わえる。 ウッドベース的であって、絶対に非ウッドベース的なニュアンス。 強くエレキベース的でありながらも、エレキでは無理なニュアンスまでをもカバーする音色、ニュアンス。 エレキベースの弦は、ウッドベースの弦に比べて、サスティン(音が鳴っている時間)が長い。 このサスティン効果を有効に生かして、まるで鈴木のベースは他の楽器に蛇のように絡みつき、巻きついてゆく。 また、このサスティンを効果的にコントロールし、あえて短い音価の音を巧みに織り交ぜることによって、ロン・カーター的な黒いニュアンスも出すなど、変幻自在の表現力をみせつける。 齢75にして、このしなやかな強靭はどうだ。 ベーシスト・鈴木勲のキャリアはそうそうたるもので、ダテにアメリカ軍楽隊のキャンプでの演奏、渡辺貞夫グループでの演奏を経て、米本国ではアート・ブレイキー、セロニアス・モンク、エラ・フィッツジェラルドとの共演も果たしたほどの実力派だ。 ピッコロ・ベースといえばロン・カーターが有名だが、彼とほぼ同時期にピッコロベースを前面に押し出したプレイをしていたのも彼だ。 この華麗なるキャリアに安住することなく、さらに独自の音を探求し、今度はエレキベースの弦を張ったアグレッシブなジャズを試みるという冒険精神には脱帽。 くわえて若手を育てることも忘れてはいない。 アルトサックスの纐纈雅代(こうけつ・まさよ)だ。 このアルバムは彼女を大きくフィーチャーしているといううたい文句だが、残念ながら纐纈のアルトよりも、鈴木勲のベースプレイに耳が吸いついてしまう。 もちろんアグレッシヴなオーネット・コールマンばりのアルトをプレイする纐纈のプレイもなかなかではあるが、いかんせんまだまだ表現レンジが狭いことは否めない。 残念ながら、アグレッシブでエッジの立ったプレイの素晴らしさは重々に認めつつも、いまだ、「激しさのための激しいプレイ」、「アグレッシブさのためのアグレッシブなプレイ」に終始している感がなきにしもあらず。 しかしそれをもって否定するわけではなく、まだまだ若手。これからの人なのだ。 そしてもう一つ。表現レンジの広すぎる鈴木のベースとの対比効果もあるのもいたしかたのないこと。師匠を凌駕するほどのワイルド・レンジなアルト奏者に成長してゆくことを今後期待したいと思う。 それにしても、鈴木勲の「鉄の蛇」のようにニョロニョロと力強く動き回るベースはどうだ。 まるでエンジンが唸りをあげて力強く回転をキープしているようなバッキング。 一点して、勢いよく共演者に飛びかかるしなやかなバネと中低音の攻撃力の強さ。 下手をすれば、共演者は全員、この「鉄の蛇」に食われ、呑みこまれかねないほどの勢いだ。 アルトとのデュオあり、ラテンナンバーあり、シンセの絡んだナンバーありと、バラエティに富んだ内容ではあるにもかかわらず、どれもが鈴木ベース一色に塗りつぶされた、非常にユニークなベースを味わえるアルバムだ。 個人的には、もう少し統一感のある内容のほうがよかったと思うのだが、エレキベースの弦を張ったウッドベースで様々な種類の音楽にトライしてみたかったのだろう。 是非、同じベースのセッティングでの次回作を期待したい。 |
| (2009/01/09) |
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