LEE MORGAN VOL.3 (Blue Note)
- Lee Morgan

  1. Hasaan's Dream
  2. Domingo
  3. I Remember Clifford
  4. Mesabi Chant
  5. Tip Toeing

Lee Morgan (tp)
Gigi Gryce (as)
Benny Golson (ts)
Wynton Kelly (p)
Paul Chambers (b)
Charlie Pership (ds)

1957/03/24
このアルバムは、クリフォード・ブラウン追悼でベニー・ゴルソンが書いた名曲《アイ・リメンバー・クリフォード》で語られることが多い。

というよりも、この1曲が、このアルバムのイメージを決定づけてしまっているといっても過言ではないだろう。

19歳の若さで、ここまでの表現力!という驚嘆と賛辞を惜しまない評論を多く目にするし、実際、やんちゃラッパのモーガンが淡々と、かつ朗々と遊び心を排した神妙な吹奏は、耳を引き付けるだけのものがある。

くわえて「亡き先輩を偲ぶ次の世代のトランペッターの心のこもった演奏」という物語性も名演度に拍車がかかっていることもたしか。

しかし、個人的には、バド・パウエルの沈鬱な名演(『ゴールデンサークル vol.3』)を聴いてしまうと、ここでの《アイ・リメンバー・クリフォード》は、凡庸とまでは言わないが、モーガンのプレイそのもよりも、メロディとアレンジの良さが演奏を底上げしているように感じられてならない。

そう、曲とアレンジ。このアルバムの面白いところは、リー・モーガンのリーダー作でありながらも、モーガン色が薄く、むしろベニー・ゴルソンの色が濃いことだろう。

収録された5曲すべてがゴルソン作曲。ゴルソンのアレンジ。

前作に引き続き、ゴルソンに全面的に新人モーガンのバックアップを任せるというこの方針は、ブルーノート社長のアルフレッド・ライオンによるもので、モーガンのリーダーアルバムながら、ゴルソン色が強いのは、最初からライオンの目論見でもあったのだ。

ジャケ裏の「コンポジション・アンド・アレンジド・バイ・ベニー・ゴルソン」という表記からも、ブルーノートの明確な意図がキチンと伝わってくる。

1曲目の《ハサーンズ・ドリーム》からいきなりオリエンタルなムードへと誘われる。

モーガンもアドリブパートでは奮闘はするも、やはりこの演奏の強烈なイメージは、ジジ・グライスがテーマで奏でる中近東風のフルートの旋律、そしてアルトサックスに持ちかえたグライスによるウネウネしたソロが鮮烈だ。

もちろん、この結果は、このような曲を書き、印象深いアレンジを施したゴルソンの手柄であることは言うまでもない。

2曲目の《ドミンゴ》は、スペイン語で日曜日という意味。
この曲もエキゾチックな雰囲気をたたえ、アップテンポで進行してゆくが、印象に残るのは、やはり曲想に合ったソロをとるゴルソンのハスキーな音色とモゴモゴとした語り口だ。

もちろんモーガンのトランペットも溌剌としたアドリブを取っており、パリッとした潔いプレイもさることながら、聴かせどころを心得たアドリブの組み立て方が見事ではある。

しかし、これぐらいのレベルの演奏は、他の曲でもいくらでも聴くことが出来るゆえ、モーガン会心の名演とはいえない。
むしろモーガンのブリリアントさと比較すると、いまひとつモサモサしたゴルソンのプレイではあるが、むしろこの曲においては、このようなアドリブの語り口のほうが印象に残ってしまう不思議さがある。

曲のツボを押さえている作曲者・ゴルソンのほうが一枚上手なのだ。

後半の2曲、《メサビ・チャント》と《ティップ・トーイング》にもゴルソン色が全開。特に前者のテーマはよく聴くとかなりヘン。

ヘンというか、サビの終わりに寸詰まり感で、聴き手をハッとさせる。
4ビートの流れに身をまかせていると、一瞬「おっ!」と身体の揺れがストップしてしまいそうな効果がある。

また、後者はアドリブパートは、能天気で凡庸なブルースに感じるが、テーマのアンサンブル処理は、細かいところにまで神経が行き届いているところがゴルソンらしい。

このように、このアルバムには細部にいたるまでゴルソンの強い息がかかっており、リーダーがゴルソン、フィーチャリング・リー・モーガンとクレジットされてもおかしくはない内容なのだ。

モーガン色の強い《アイ・リメンバー・クリフォード》を除けば、このアルバムの陰の主役はべーニー・ゴルソン(もっともこの曲もゴルソンの作曲だが)。

驚異の新人トランペッターだったリー・モーガンは、かくも優秀な先輩と、レーベル社長のお膳立てにより、非常に短いスパンで次々とブルーノートにアルバムを吹き込み、テクニックのみならず、実地でのジャズの学習を消化し、経験値を増してゆき、さらにスケール大きなトランペッターとして羽ばたいていったのだ。
(2009/07/09) 


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