TETRAGON (Milestones) |
| - Joe Henderson |
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Joe Henderson (ts) Don Friedman (p) Kenny Barron (p) Ron Carter (b) Louis Hayes (ds) 1967/09/27 1968/05/16 |
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《ボディ・アンド・ソウル》といえばコールマン・ホーキンス。 《アイル・クローズ・マイアイズ》といえばブルー・ミッチェル。 《マイ・フェイヴァリット・シングズ》といえばコルトレーン。 このように、ある曲を思い浮かべると、同時に特定のジャズマンがトレードマークのように思い浮かぶことってよくありませんか? 「この曲といえば、あの人!」というような感じで。 では、《インヴィテーション》の場合は誰か。 私の場合は、ジョーヘン(ジョー・ヘンダーソン)が真っ先に思い浮かぶ。 そのジョーヘンの代表作といえば、《インヴィテーション》の入っている『テトラゴン』。 ジョー・ヘン独特の“うねうねトグロ巻き”フレーズと“ふがふが音色”が良い具合に活かされ、かつ、彼にしか出来ない歌い方で仕上がっているのが、『テトラゴン』の《インヴィテーション》なのだ。 一言で言えば、非常に生々しい演奏だ。 冗談まじりに《“淫靡”テーション》などと漢字変換して遊んでいるアホな私だが、たしかに《インヴィテーション》という曲は、妖しく淫靡な匂いを放つメロディではある。 そして、この曲想とジョーヘンのテナーは、とてもマッチするのだ。 録音の恩恵もあるのかもしれない。 ヘッドフォンで聞くと、右耳にベースがツンツン、左耳にシンバルがしゃんしゃんと分離していて最初は気持ち悪いが、慣れてくるとジョーヘンの生唾したたるリアルな音色のサックスが聞こえてくる。 サックスのキーがカチャカチャ、タンポ(パッド)がカポカポ鳴っている音までもが聞こえてくる。さらに、ジョーヘン独特のふがふがした音色にベルから空気が漏れる音もプラスされて聞こえたり、マウスピースに滞留している唾がしゅるると音を立てているのも耳をこらせば聞こえるんじゃないかと思うぐらい、ジョー・ヘンダーソンの息遣いまでもがしっかりと捉えられている録音なのだ。 録音がリアルだから、この演奏が良いというわけではない。先述した生々しい“雑音”も、この曲においては素敵な効果音、音楽の一部として有効に溶けているうえに、ますます演奏の生々しい感触を高めているから面白いのだ。アコースティックならではの醍醐味だ。 ジョーヘンは、ほとんどテーマを崩すことなく、わりとストレートな吹き方をしているが、やはり、アドリヴはどこをどう切り取ってもジョーヘン節のオンパレード。《インヴィテーション》のテーマと、ジョーヘン節との違和感はまったくなく、まるで彼のアドリヴは《インヴィテーション》のメロディの変奏にも聴こえるほどなのだから、よっぽどジョーヘンとこの曲は、相性が良いのだろう。 しかし、このアルバムのおいしいところは《インヴィテーション》だけではない。 まず、ドラムがジャック・ディジョネットなので、彼の煽りまくるドラミングが楽しめる。非常にエキサイティングだ。 こんな言い方すると語弊があるが、トニー・ウイリアムスとエルヴィン・ジョーンズの良いところを合体させたようなドラミングなので、倍速テンポになった瞬間など、一瞬、トニーやショーターが在籍していた頃のマイルス・クインテットと錯覚する瞬間がいくつもある。 しかも、ベースがそのときのベーシストロン・カーターなので、なおさらだ。 彼の浮遊感ある不安定な音程と、“ぷつん・ぷつん”としたノリのが、より一層、曲をアブストラクトに彩ってくれている。 さらに、マイルス・クインテットを彷彿させる理由として、ピアノがドン・フリードマンなこと(曲によってはケニー・バロン)。 ドン・フリードマンの理知的なピアノが、ロンのベースと、ディジョネットのドラミングにブレンドされると、見事にマイルス・クインテット的な肌触りを感じさせる先鋭的かつアブストラクトな光彩を放つ演奏となる。 もっとも、フリードマンのピアノは、ハンコックよりもかなりメランコリックだが。 しかし、私は、このメランコリックさが好きだ。 ハンコックもフリードマンも8分音符をイーヴンに弾きながら疾走するような奏法が得意だが、肌触りが面白いほど違う。 私は、両方とも好きだが、ハンコックのほうが硬質な肌触りを強く、フレーズにも構造的な強さを感じられる。 一方、フリードマンの8分音符の水平疾走は、かなり情緒的。デリケートで儚い感じがする。湿り気を帯びた感触。 このようなフリードマンの和声と、メランコリックなピアノソロも楽しめるので、このアルバムはジョーヘンの名演にくわえて、フリードマンの理知的な響きと、繊細さがバランスよく溶け合ったピアノを楽しめるアルバムでもあるのだ。 ドン・フリードマンといえば、《サークル・ワルツ》を思い浮かべる人も多いと思う。このアルバムにもワルツが一曲ある。 やはり、作曲はフリードマン。 一瞬ピアノソロの一部が《サークル・ワルツ》なんじゃないか?と思われる瞬間が出てくるのもご愛嬌。 全編にわたってジョーヘンのふがふが・ブリブリテナーが炸裂しているアルバムなので、しばらくはテナーのサウンドに魅了され続けるかもしれないが、一通りジョーヘンのテナーに慣れたら、是非とも奥深いピアノにも耳を向けて欲しいと思う。 ブルーノートからマイルストーンに移籍後のアルバム。 正直、ジャケットはしょぼいかもしれないが、内容の濃さはピカイチ。 文句無しにジョーヘンの代表作の一枚に挙げたいアルバムだ。 |
| (2004/03/05) |
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