WHEN THERE ARE GREY SKIES (Prestige)
- Red Garland

  1. Sonny Boy
  2. My Honey's Lovin' Arms
  3. St. James Infirmary
  4. I Ain't Got Nobody
  5. Baby, Won't You Please Come Home
  6. Nobody Knows The Trouble I've Seen
  7. My Blue Heaven

Red Garland (p)
Wendell Marshall (b)
Charlie Persip (ds)

1973/12/10
冒頭の《ソニー・ボーイ》の内省的なイントロが始まった瞬間から、いつものガーランドの雰囲気とは違うことに気づく。

“いつものガーランド”とは、スインギーで小気味良いノリ、コロコロとしたタッチ、安心リラックスな雰囲気なピアノのことだ。

祈るような、慎ましやかなピアノでイントロを奏でるガーランド。
ほどよい頃合いで、ベースとドラムが入り、神妙な空気が少しだけほぐれるが、ガーランドにしては珍しく(?)、少し襟を正した緊張感をはらんだピアノソロによる出だしは、聴く価値アリ。

2曲目からは、“いつものガーランド”なノリが回復するが、1曲目を聴いて「一体どうした、ガーランド!?」と思ってしまうのは私だけではないだろう。

というのも、62年にレコーディングされた本作を最後に、彼はしばらく消息を絶ってしまうからだ。復帰したのは71年。随分と長い間シーンから遠ざかっていたわけだが、もしかしたら、この作品を録音している時点での彼は、真剣に引退を考えていたのかもしれない。

しみじみと切ないほどのタッチのピアノを奏でるのは、1曲目だけではない。
このアルバムのハイライトとの一つともいえる《セント・ジェームス病院》。
うーん、音色、フレーズはガーランドなんだけれども、間の取り方や、漂う雰囲気が重い。沈痛ですらある。

そして、もう一曲。
《誰も知らない私の悩み》。

かなりのスローテンポで、淡々とつづるガーランドの独り言。ムーディな演奏ともいえるが、フレーズとフレーズの間からは、ガーランドのため息が聞こえてきそうな演奏だ。

少ない音数。消え入りそうなピアノのタッチ。
それなのに、いや、それゆえに、最後の最後まで一音すら聞き漏らすまいと耳をそばだててしまう。

ラストは、CD化の際に追加収録された《マイ・ブルー・ヘヴン》。
あまりに切ない《誰も知らない私の悩み》が醸し出していた雰囲気を、軽快なミドルテンポの曲で締めくくるという流れは悪くはない。
しかし、この曲の演奏もいかんせん、元気がないのが気になる。

彼の代表作『グルーヴィ』や、初リーダー作の『ア・ガーランド・イン・レッド』で楽しめたハツラツとした力強さは感じられない。
弾いている内容は、これらのアルバムとほとんど一緒なのに、ちょっとしたタッチや間の取り方の違いで、驚くほど雰囲気が変わってしまっている。
消え入りそうに力なくバウンスする彼のピアノは、聴いていると悲しい気分になってくる。

もちろんすべての曲が元気の無い演奏というわけではないが、『ホエン・ゼア・アー・グレイ・スカイズ』のガーランドの気分は明らかに他の諸作と比べると“沈痛”だ。“沈痛”という表現が大袈裟ならば、“静謐”。
しかし、出てくるピアノはどこをどう切っても、まぎれもなくガーランドの世界。
この微妙な味わいは、このアルバムだけの唯一無二な世界。スタイルは変わらないが、彼のピアノは、決して世間で言われているほど“金太郎飴”なピアノではない。
(2004/11/28) 

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