MILES DAVIS VOL.2 (Blue Note)
- Miles Davis

  1. Kelo (Alternate Take)
  2. Kelo
  3. Enigma (Alternate Take)
  4. Enigma
  5. Ray's Idea(Alternate Take)
  6. Ray's Idea
  7. Tempus Fugit
  8. Tempus Fugit(Alternate Take)
  9. C.T.A. (Alternate Take)
  10. C.T.A.
  11. I Waited For You

Miles Davis (tp)
J.J.Johnson (trb)
Jimmy Heath (as)
Gil Coggins (p)
Percy Heath (b)
Art Blakey (ds)

1953/04/20
『カインド・オブ・ブルー』が好きで、『ビッチェズ・ブリュー』に圧倒され、『オン・ザ・コーナー』や『ダーク・メイガス』でクラクラする。

このようなことを過去に散々書いてきたけれども、そして、それらはウソ偽りの無い事実だけれども、結局、私が最終的に戻ってくるマイルスは、きっと、ここなのです。

ブルーノートのマイルス。

正確にいうと、ブルーノートに吹き込まれた1952年と53年の演奏。
2枚のアルバムに分けて収録された『マイルス・デイヴィス』。

これがあれば、なにもいらない。
と、書くと少々大袈裟かもしれないが、私にとって大切な作品なことには変わりない。

私がいちばん最初に自腹を切って買ったマイルス、演奏の細部までくり返し聴きこんだマイルス。
とにかくこのアルバムが好きなんです。
いや、好きという言葉では終われないな。もう身体の一部といってもいいぐらい。

ジャズのレビューを色々と書いてきた私だがこのアルバムに関してのレビューは避けていた。あまりにも思い入れが強すぎて、自分自身の感情をうまく言語化できなかったからだ。

しかし、いつまでも内に秘めてくすぶっていても仕方がない。ここらで、もう吐き出してしまおう。

「ボクが一番思い入れのあるマイルスのアルバムはコレなんです」、と。
「ブルーノートのvol.1とvol.2のマイルスが好きなんです」、と。

どこが好きかというと…、全部!

ムード、メロウな感じと、どことなく漂う諦観めいたニュアンス。
それなのに、しっかりとした骨太な力強さも感じられ。退廃的なムードと、相反するような前へと一歩ずつ力強く歩んでゆこうとする音に込められた意思。

収録曲は、もちろんすべて良いが、強いていえば、力強い《テンパス・フュージット》と、深みのあるバラード《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》か。

バド・パウエルのオリジナル演奏は別格だが、多くのジャズマンがトライした数ある《テンパス・フュージット》の中ではこのバージョンが一番好きだ。

緊張感溢れるマイルスの重たいラッパが空間を強引に捻り切る。 アート・ブレイキーの迫力あるドラムも炸裂する。

この2つの要素で、初めてマイルスを聴いた私は「これはヤバい。細かいことはよく分からないけれども、これは何かありそうだ」と直感した。

ちなみに、ジャズに入門したての私が、トランペットで最初に買ったアルバムは、ヒノテルのベストだった(笑)。
4ビートな内容を期待したら、思いっきり8ビートや16ビートのフュージョンだった…。

「これもジャズっていうんだろうか? なぁんか違うよなぁ」
サクッと小気味良いフュージョンサウンドを聴きながら首をかしげた。

そして、2番目に手を出したトランペッターが、マイルスだった。
名前ぐらいは知っていたし、ジャズの中では大御所らしい、ということも漠然と知っていた(カラヤンがクラシックの指揮者の中では大御所らしい、程度の予備知識だが)。

その程度の予備知識なので、店頭ではどのアルバムを買えばいいのか分かるはずもなく、一番気になるジャケットのCDを買った。
それが、ブルーノートの『マイルス・デイヴィス』。

ジャケット下に横長にトリミングされたマイルスの姿。
この若きトランペッターは、トランペットを吹きながら、指の間に煙の出た煙草を挟んでいる。
そこが気に入った。
これぞ、オレの求めていた雰囲気だよ〜って。
安易だなぁ。でも、そういうムードに憧れていたのよ。

私が購入したブルーノートのマイルスは、東芝EMIがvol.1と2の曲をゴチャマゼに編集されたベスト盤CD。

しかし、それが良かったのかもしれない。
冒頭が《テンパス・フュージット》だったから。

しょっぱなの演奏から、なんともいえない未知なるヤバい世界を感じることが出来たから。

この編集盤では、《エニグマ》や、《ケロ》、それに《レイズ・アイディア》がカットされていたものの、ラストを《イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド》で飾るという気の利いた選曲。

勢い溢れる演奏で始まり、途中はホレス・シルヴァーがピアノのワン・ホーンカルテットが多くの曲を占め、最後は落涙ものの《イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド》で締めるという構成。

vol.1と2のオイシイところをコンパクトにまとめてくれた内容ゆえ、今考えると、この曲順で良かったのかもしれない。

ちょうど流れのヘソに当たるところに《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》を配しているところもなかなかだった。

そう、《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》が好きなんだよねぇ。

《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》。
醒めたバラード。何もかもが終わってしまった後の諦観を感じさせる。
やるせなさを感じるのだけれども、同時に力を出し切った後の心地よい倦怠感も感じられ、後年の「かっこいいバラード吹き」として名を馳せるマイルスには出せない朴訥な味を感じる。

加えて、ギル・コギンズのピアノもいいんだよな。イントロといい、マイルスの“語り”を深く彩るバッキングといい。

と、とりあえず、《テンパス・フュージット》と《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》の2曲に紹介はとどめるが、このアルバムは、個人的な心の宝物なので、万人にはお勧めしません(笑)。

しかし、ここで聴けるマイルスのトランペットに痺れ、 深いため息をつくことが出来る人とは、きっと一生の友人になれることでしょう。
(2006/09/06) 

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