SOMETHING FOR LESTER (Contemporary) |
| - Ray Brown |
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Ray Brown (b) Ceder Walton (p) Elvin Jones (ds) 1977/6/22-24 |
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シダー・ウォルトン作曲の《オホス・ロホ》が聴けるだけでも所有する価値のある1枚。 スペイン語で「赤い眼」という意味のこの曲は、ラテン・フレヴァーのリズムに、哀愁と力強さが入り混じった旋律が絡む情熱的なナンバーだ。 近年は、イタリアのトランペッター、ファブリッツィオ・ボッソ率いる新世代ハードバップバンド「ハイ・ファイヴ」もこの曲を取り上げ、スピード感と爽快さを色濃く打ち出した演奏をしている。 もちろんハイ・ファイヴのキレのある演奏も素晴らしいのだが、ビールにたとえると、ハイ・ファイヴのバージョンは、ビールというよりは、喉越し爽やかな発泡酒だ。 一方、レイ・ブラウンのバージョンはアルコール度数の高い、濃厚でコクのあるベルギービールに感じる。 どちらが良い悪いという問題よりも、これは好みの問題。 スピード感溢れるスマートな演奏は、喉が渇いたときには重宝するが、じっくりと腰を落ち着けて味わいたい場合は、コクと重量感のあるレイ・ブラウンがベースのバージョンに軍配があがる。 どっしりした安定感は、レイ・ブラウンのベースの暖かく太い音の賜物だ。 作曲者でもあるシダー・ウォルトンのジワリジワリと盛り上げてゆくピアノに、有無を言わさず演奏に強靭なグルーヴをもたらすエルヴィン・ジョーンズのドラム。 彼ら名手の三位一体となった《オホス・ロホ》は無敵だ。 内側から沸々と熱いものがこみあげてくるのは、きっと私だけではあるまい。 村上春樹が大きく取り上げたことによって、ジャズファン以外の読者からも注目を集めたシダー・ウォルトンは、その実力とは裏腹に過小評価されているピアニストの1人だろう。 もちろんピアノも素晴らしいのだが、《オホス・ロホ》のような情熱的なナンバーを書いていることからも分かるとおり、作曲のセンスも素晴らしい。 レイ・ブラウンがリーダーのこの『サムシング・フォー・レスター』では、ほかには《サムシング・イン・コモン》も作曲しているが、こちらはアップテンポのナンバーで、シダーのピアノとともに、レイ・ブラウンの卓越したベースでのバッキングもたっぷりと味わえる内容となっている。 レイ・ブラウンは、どうしてもオスカー・ピーターソン・トリオのベーシストというイメージが、彼のキャリアの中では大きな位置を占めるが、彼のような職人ベーシストは、スター性のあるピーターソンのピアノの屋台骨はもちろんのこと、レイと同じく職人タイプのシダー・ウォルトンとの相性も抜群に良いことをこの盤は教えてくれる。 ベーシストがリーダーのアルバムゆえ、どうしてもテーマの旋律や、ソロのパートは、ベースにスポットがあたる回数が多く、また、音量的なバランスもベースが持ち上げられたミックスになってはいるが(もちろん違和感を感じない程度に)、シダー・ウォルトンのピアノも十分に楽しめる内容なのだ。 シダーは、単なるベースを引き立てるバッキング要員の一員としての働きを超えており、音量のバランスを変え、ベースのソロパートを減らせば、そのままシダー・ウォルトン・トリオとしても通用してしまうほどの頑張りようだ。 タイトルの「レスター」は、このアルバムのレーベル、コンテンポラリーの社長、レスター・ケーニッヒのこと。 レイ・ブラウンがレスターに、「自分のリーダー作を作らせて欲しい」とお願いしたら、快く承諾し、録音の手はずを整えたという。 シダーを指名したのはレイだが、エルヴィンを選んだのはレスターだった。 音が大きくエキサイティングなドラミングのエルヴィンに、決してレイのベースの邪魔をするような叩き方をしてはいけないとレスターは指示を出したという。 そのためか、エルヴィンのドラムの音は小さく、というよりも奥に引っ込んだミックスに聴こえるが、これもおそらくはレスターの配慮なのだろう。 かくして1977年の6月、フュージョン全盛の世に、このような硬派でストレートアヘッドなピアノトリオが吹きこまれた。 しかし、録音直後にレスター・ケーニッヒは心臓発作でこの世を去ってしまう。 だから、このアルバムのタイトルは、レイ・ブラウンのリーダー作を世に出すために尽力したレスターに捧げる意味で『サムシング・フォー・レスター』となったのだ。 レイ・ブラウンの卓越したベースワークが楽しめると同時に、シダー・ウォルトンのセンスの良いピアノも同時に楽しめる『サムシング・フォー・レスター』は、ベースがリーダーの骨太なピアノトリオとして、ピアノトリオ好きは是非ライブラリーに加えて欲しい1枚だ。 |
| (2009/11/30) |
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