SPIRITUAL UNITY (ESP)
- Albert Ayler

  1. Ghosts :first version
  2. The Wizard
  3. Spirits
  4. Ghosts :second version

Albert Ayler (ts)
Gary Peacock (b)
Sunny Murray (ds)

1964年7月
混沌とした中にも美しさがある。
アイラーと共振しているテナー・サックスの強烈なバイブレーションは、一聴、騒音に近い耳障りかもしれない。
しかし、丁寧に一音一音追いかけてゆくと、身体の底から搾り出される豊かな旋律が聞こえてくるはずだ。

彼のテナーのサウンドは、まるで、肉体の一部のようだ。
限りなく「肉声」に近いと思う。
その「肉声」は、口から発せられる「声」というよりも、内臓の呻き、細胞のざわめきが、そのままサックスを通してダイレクトに放出されているように感じる。

《ゴースト》のテーマの旋律の、なんと素朴で無防備なことか。
コルトレーンは、ヨーロッパでアイラーの演奏を聴いて、「ああいうふうに吹きたい」と言ったそうだが、己の内面をダイレクトに音として昇華させることの出来る、ある種「天然な」アイラーのプレイスタイルに憧れを感じたのだと思う。

どうでも良いことだが、個人的にちょっと気になるのが、《ゴースト:セカンド・バージョン》の演奏中に聞こえる「ピー」という音。
まるで、テレビの放映中に放送禁止用語を遮る音のようだ。
レコーディング中、なんらかのトラブルなのだろうか?
もっとも、このノイズがあっても、この演奏の音楽的価値が損なわれることはまったく無いのだが。
逆に、不思議な臨場感と、「ヤバさ」が強調されているようで、何度も聴いているうちに、このノイズも音楽の一部だとさえ思えてくる。

この『スピリチュアル・ユニティ』は、アイラーのアメリカデビュー作品。
ドラムのサニー・マレイのシンバルの刻み、含蓄溢れるゲイリー・ピーコックのベースも素晴らしい。
滅茶苦茶なようでいて、かなり考えられたプレイだと私は感じている。

(2002/05/09) 

アイラーの絶叫に近い“肉声”に魅せられ、ノックアウトされていた自分がいたが、どうも、このアルバムだけは、ほかのアイラーとは肌触りが違うということに、最近気が付いた。

音の過激さと同時に柔らかさも常に兼ね備えているアイラーの“肉声”は、どういうわけか、このアルバムに限っては限りなく“硬い”のだ。

気が付くキッカケは、サニー・マレイのドラミングにまで耳が行くようになってから。

セシル・テイラのカフェ・モンマルトルのライブでのプレイもそうだが、マレイのシンバルワークは限りなく細かい。

分子レベルにまで分割されたビートが再構築され、巨大なウネリと高揚感を出すかのごとくだ。

アイラーは、彼のドラミングに煽られ、急き立てられているのではないのだろうか?

もちろん良い意味で。

それにプラスするように、ゲイリー・ピーコックの硬質かつダークなベースも、いつもと違うアイラーを引き出すのに一役買っていると思う。

過激な中にもオトボケの要素があり、だからこそ、魅力のあるアイラーのテナーだったが、『スピリチュアル・ユニティ』では、彼の中のニコヤカな表情が陰をひそめ、ひたすら嵐のようにテナーを吹き鳴らす鬼神に変身している。
それこそ“なにか”に取り憑かれたように。

その“なにか”の正体は、おそらく、サニー・マレイのドラムだ。

しかし、こんなに凄いドラマーでも、世間の評価は冷たい。いや、すでに忘れされているのか、あるいは、最初から認知されていないのか。

ニューヨークの街角の一角には、
「ドラム、教えます  サニー・マレイ」
という張り紙が。
現在の彼は、細々とドラム教室で生計を立てているようだ…。
(2006/02/07 配信) 

▼ CD(左)と、アナログ盤(右)
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