雑想 <▲ home

セシル・テイラー聴きまくり


今日は一日中セシル・テイラーを聴いていました。

こういう暑い夏の日には、エレクトリック・マイルスとか、後期のコルトレーンとか、フリージャズを聴くのが気持ちいいのです。

真夏にクーラーをつけずに、熱〜い味噌ラーメンとか、もつ鍋をはふはふ言いながら汗をボタボタとかきながら食べる快感に近いものがあります。

なんだか、身体の芯からグアァ〜と熱くなって、奥のほうから汗がドバババと出る感覚がたまらなく好きなのですね。

その反対に、冬に暖房をたっぷりと効かせた部屋でアイスクリームを食べながらボサノバを聴くと贅沢な気分にひたれる私は、ひょっとして天邪鬼なのかな?

とにかく、人と反対のことをやってみようというへそ曲がりな根性でやっているわけではなく、長年の経験でつかんだ個人的快楽が夏にグジャグジャな熱い音楽、冬にボサやクールジャズなんですよ。

皆さん一度お試しください。

学生の頃は、もう気が狂うぐらいガンガンと毎日かけまくっていたものですが、セシル・テイラーをこんなにぶっ通しで聴くのは久しぶり。

一番よく聴いたのがです。『アット・ザ・カフェ・モンマルトル』セシル・テイラーの不気味知的ピアノがゾワゾワと脊髄を刺激し、サニー・マレーの細分化パルスドラムが刺激的なアルバムです。この2人に比べると、少し保守的なジミー・ライオンズのアルトサックスが、ビ・バップから未知の領域への橋渡し役を果たします。

私は毎日大学に通っていましたが、授業はほとんど出ずに、一日中朝から晩までジャズ研のソファで寝っころがっていました。

で、部員が部屋にやってくると音を合わせ、彼らが授業に出かけてしまうと、マイルスの『ダークメイガス』やセシル・テイラーの『カフェ・モンマルトル』を聴きながら昼寝をするわけです。

気持ちよかったなぁ。

このHPのタイトルがカフェ・モンマルトルなのも、セシル・テイラーのライブ盤の影響が強いかもしれません(あと、ある筋から入手したバド・パウエルのカフェ・モンマルトルでのライブ映像の影響もあります)。

それにしても、ホント、いろいろなセシル・テイラーを聴いたなぁ。

その中の一部をサラリと紹介。

『Conquistador!』
これは、個人的に最高傑作だと思っているアルバムで、鳥肌モノです。





『Unit Structures』
これは、上記『コンキスタドール』のちょっと前に録音されたやつ。こちらはちょっと難解。しかし、難解なものを「うーん、うーん」と脳味噌使いながら聞くのもまた快感。人間、脳味噌を本当に振り絞るように使うと、エアロビクスでカロリーを消費する以上に消耗するそうです。
そうか!だから、学生時代の俺は痩せていたんだ(笑)。




『Cecil Taylor Unit 』
これは、世界が瓦解する様子を音楽で表現したらこんな感じかなぁという演奏。ヴァイオリンの参加が効いてます。


『Dark To Themselves』
こっちは、ビルが倒壊する様子かなぁ。




『For Olim』
これはクラクラしますねぇ。ジャケットのビジュアルとの相乗効果もあり、かなり幻惑されます。


『Embraced』
これはピアノの女傑、メリー・ルー・ウイリアムスとのピアノ同士の一騎打ち。重量級ピアニストとのぶつかり合いが大迫力ですが、意外にゴスペル色も強く、聴いているとじわじわと興奮&快感。


『Looking Ahead!』
これは初期の録音ですねぇ。ヴァイブの参加が鋭角的なテイラーのピアノをさらに鋭角的かつ理知的に彩ります。このへんなら、普通のジャズ好きでも耐えられる内容かな。





『The World of Cecil Taylor』
これはアーチー・シェップの初レコーディングでもある名盤。うねうねとトグロを巻くシェップのテナーサックスにテイラーが高速で絡むと、シェップまでもが知的に感じてしまうから面白い。


『Jumpin' Punkins』や、


『Cell Walk For Celeste』や、
『Air』の3枚は、テイク違いの重複する演奏が多いので、どれが良いというわけではなく、気分次第やジャケット次第で選んでその都度聴いているという感じ。泥臭いホーン陣と、鋭角的かつ攻撃的なテイラーのピアノの対比が見事。

『Cecil Taylor Segments II Winged Serpent (Sliding Quadrants) 』
これはある意味珍盤かも。アメリカで買ったフリージャズを取り上げていたディスクガイドに大きく取り上げられていたので、ニューヨークのタワーレコードで買って聴いてみたら、うじゃうじゃ、あへあへ、もじゃもじゃ、いっひーん、と狂ったような声の大合奏。こりゃまた楽しいわ、わっはっは。ジャズ研の後輩たちにマネさせて、自分も校門の前で鍋を叩いてトランス状態になっていたら、学生課に呼び出されて大目玉を喰らった(笑)。


『Olu Iwa』
これは、比較的最近の録音ですね。ますます冴え渡りすぎる彼の世界に、俺、ついていけるんだろうか、取り残されるんじゃなかろうかと、不安たらたらな盤です。


『Jazz Advance』
うってかわって、これはセシル・テイラーの初録音。まだまだポキポキと硬いです。悪くいえば、スタイルが確立されておらず中途半端ともいえますが、それはその後の彼のプレイを聴いているから感じることであって、ビ・バップ的なピアノの延長線上で聴くと、かなりアバンギャルドで厳しい世界が構築されています。《帰ってくれれば嬉しいわ》のピアノソロが美しい。


『New York City R&B』
これは聴きやすいですねぇ。ブエル・ネイドリンガーの産み出す、柔軟性のあるベースのビートが、攻撃的なテイラーのピアノを気持ちよく和らげていますね。


『Love for Sale』
これは隠れ名盤。これも結構リズムがドライブしている。聴きやすい。


Cecil Taylor & Roswell Rudd 『Mixed』
これは、ラズウェル・ラッドの分厚いトロンボーンが聴きモノ。なんだか、アンサンブルが厚くなったとたん、セシル・テイラーのアンサンブルって、ものすごく巨大で偉そうになる(笑)。


『Double Holy House』
これも最近の録音。彼の美的感覚はより一層磨きがかかってきています。年とってもテクニック、衰えるどころか、ますますスピード感溢れ、なおかつ若い頃にはなかった独特のオーラを築き上げていますね。


『Indent』
名盤の誉れ高いソロアルバム。『サイレント・タン』とともに聴きやすく、衝撃度も高い世界。正確すぎるタッチに驚愕&戦慄。


『Looking』
暴風雨っす。これを聴きながらイチゴかき氷食べると、妙に心地よかった(笑)。


『アキサキラ』
これは山下洋輔も当時のトリオの仲間と見に行き戦慄したという、日本での圧巻ライブ。2枚組で1曲(笑)。いやはや、これはものすごい密度と集中力。残念ながら、1枚目でギヴアップ…。





『イントゥ・ザ・ホット』
ギル・エヴァンス名義だけれども、ほとんどテイラーの音楽といってもいいほど。テイラー大暴れ。大暴れのスペースをきちんと設けたギルも偉い。



『At Newport』
これは幻のアルバムですねぇ。比較的聴き易い内容で初心者にもオススメ。


……というわけで、上記アルバムのすべて頭からお尻まで聞いたわけじゃないんですけど、途中で他のアルバムに替えたり、前半だけ聴いたりということを繰り返してました。

お陰で、右の目玉が四角、左の目玉が三角で、頭の上には蚊取り線香がクルクルと渦巻いております。

とにかく強烈過ぎる体験を自らしてしまったものです。劇薬をガバッと一気に飲み込んだような感じ。

で、さすがにハードで前衛な音ばかり浴びていたので、運動のあとのマッサージというか、頭の筋肉ほぐしでかけたのが、

山中千尋の『アウトサイド・バイ・ザ・スウイング』



……こ、こら、笑うな(笑)。

正直、ジャケ買いなアルバムですが、ベースがロバート・ハースト、ドラムがジェフ・ワッツというスゴイ布陣なんだぞ〜!

シングルトーンで執拗に中低域を徘徊する《クレオパトラの夢》や、ピアニカを吹いている《キャンディ》が、テイラー漬けの後の良い息抜きになります。

2曲とも演奏の良さよりも、アプローチのアイディアのほうが先にたつ演奏なので、正直何度か聴くと飽きてしまうんだけれども、《キャンディ》のような曲想の可愛い曲がピアニカで演奏される可愛さが可愛い(←なんのこっちゃ)。

とにもかくにも、セシル・テイラー三昧のあとは、熱いサウナのあとの冷たく甘いコーヒー牛乳(瓶ね)が五臓六腑に染みてくるのと同じ理由で、山中千尋を冗談半分でかけたら、いい感じだったという、超両極端な音楽鑑賞な一日でした。

さぁて、シャワー浴びてこれから酒呑みながらジェーン・バーキンを聴きます(笑)。

(記:2006/08/13) 
(加筆修整:2007/10/22)